今回も前号に引き続きドリームムービー映像制作スタッフ4名(荻本、神代、藤村、伊藤)による座談会形式でお送りいたします。
今月のテーマは一般的なビデオカメラと一眼カメラによる映像の違いや特徴を語っていきたいと思います。まず初回は、それぞれの背景をすこし話していければと思います。
まずは、ビデオカメラと一眼カメラの簡単な定義をしておきます。
「ビデオカメラ」は放送業界で使用するような肩に担ぐ大型のENGカメラやお子さんの運動会の撮影で使うハンディカムのようなコンシューマー向けも含む、動画撮影に特化したカメラです。
一方「一眼カメラ」は写真撮影用のカメラです。スチルカメラのデジタル化への流れの中で、写真の味わいや高画質を動画撮影に活用するという展開のもと、現在でも先頭を走るCANON EOSが登場することとなり、一眼レフ、ミラーレス一眼、共々ここ十数年で一つのジャンルを確立しています。
以上を踏まえて、今回のテーマについて話しを始めてまいります。
藤村:私は元々写真が専門なので映像制作においても一眼カメラでの撮影が馴染み深いのですが、当社の制作実績などを振り返ってみると、ビデオでの撮影が主軸になっていると思います。
したがって、みなさんも一眼カメラよりビデオカメラに多く触れていると思います。
そこでこの機会に、当社の映像制作とビデオカメラでの撮影の親和性、利点のようなものをどのように考えているかお聞きしたいです。
伊藤:確かに藤村さんは元々フォトグラファーですので、我々3人映像制作会社(神代、荻本、伊藤)の人間とは感覚が違いますよね。
私は、まずビデオカメラがありきで、その後、突如一眼ムービーが出て来て、その時、映像の綺麗さにすごく驚きました。
最初は他人事のように傍観していたのですが、急遽自分でも使わなければならなくなり、一般的なビデオカメラとの違いや、取り扱いに、かなり戸惑ったという記憶があります。
藤村さんの場合は映像撮影は一眼カメラからという感じですか?
藤村:元々大型カメラ(フィルムのサイズが4インチ x 5インチ)を使用した写真の制作を中心に、映像制作も行っていました。しかし、センサーサイズの小さいビデオカメラでの撮影については写真と比較した際の画質(フォーカスや被写界深度)の点で違和感を持っていました。
一眼カメラで動画撮影が可能になる以前は、その違和感を解消するにはシネマ用の機材を考慮しなければなりませんでした。
それがCANONのEOS 5D Mark2が登場したことにより、一般の写真機材と写真のスキルの延長線上で動画を扱うことが可能になりました。
※CANON EOS 5D Mark2:2008年11月発売。EOSシリーズ初となるフルHDでの動画撮影機能を搭載
それは映像制作においてとても大きい出来事だったと感じています。その影響は映画制作の場面にまで波及して、2010年公開のモンテ・ヘルマン監督の映画『果てなき路』で5D Mark2が撮影に使われました。映画を実際に劇場で見て、とても刺激を受けた記憶があります。
伊藤:なるほど、我々とはまた違った視線で映像制作するということで非常に面白いですね。やはりCANONのEOS 5D Mark2の登場がキーワードとなりそうです。
神代さんは、どうでしょうか?
神代:初めてEOSの動画を見た時には衝撃を受けました、これ映画じゃないかと。
しかもその動画を作ったのがアマチュア(スチール)カメラマン… それまでも企業ビデオ等の現場では24Pで撮影できるビデオカメラで、映画風の映像は撮影していたのですが、あくまでもフイルムに寄せた映像表現でした。それがEOSの登場で一気にシネマカメラという世界が映像制作の世界になだれ込んできました。
今まで頑張って寄せてきたのに.. あまりの映像の美しさにしばしやる気を失いました(笑)そこから映像制作の現場で一眼ブームが起こるのは早かったですね。猫も杓子も一眼動画、ブライダルから会社案内、企業CM、リクルートムービー。私もその一人ですが。シネマライクの映像を撮影したいという気持ちはもちろんあったのですが、なにせクライアント受けがいい。
しかし、当時はビデオカメラマンは一眼で撮影するのを本当に嫌がってる方が多かったですね。今は逆にカメラマンから提案されますが。やはり映像は綺麗とはいえ、プロ機材としては不安定な要素が多かったのもあります。演出チームはやりたいけど技術が嫌がるみたいな感じでした。
フルサイズのセンサーで動画をしっかり撮影するというのはCANONも想定してなかったと思います。熱暴走で突然フリーズしたりと、そんなこともあり、当時プロダクションでは、フルサイズの5Dの導入より、APSサイズの7Dが重宝がられました。APSでも十分大きなセンサーなんですけど。
※「フルサイズ」センサーサイズ24mm x 36mm:デジタル以前、35mmフィルム時代のサイズに近いことで、“35mmフルサイズセンサー”と呼ばれる。上位機種に採用されている。
※「APS-C」センサーサイズ22.4mm x 15.0mm:画質は極力落とさず小型化を実現するために開発されたセンサー。初心者向けのモデルに採用されている。
「EOS 7D」はハイアマチュアをメインターゲットにCMOSセンサー(APS-C)を搭載。
伊藤:熱暴走でフリーズありましたね!CANONさんも当初は動画はオマケみたいな感じで、まさかこういう展開になるとは思ってはいなかったんでしょうね。荻本さんはいかがでしょうか?
荻本:私の前職はポスプロのビデオ編集オペレーターということがありますが、その当時(2010年前後)の現場感から言いますと、まだ編集室まで降りてきていない感じだったのかも知れません。少し時代が古いのと、先端を行く場所というわけではありませんでしたので参考になるか分かりませんが、番組制作に一眼カメラはあまり関係なかったのかなという印象です。ただ、音楽番組内で使用していたミュージックビデオは一眼撮影がほとんどだったでしょうね。ビデオとは質感が違うなというのは感じてました。ちなみに藤村さんのようなクリエイターさんが監督をしてましたね。
機材の側面からも動画制作会社だけの業界ではなくなりつつある時代だったのでしょう。
また蛇足ですが、当時はV(ビデオ)シネマが流行っていた時代でしたけど、残念ながら一眼カメラを使用した作品には出会えなかったですね。“V”なので当然でしょうが。ビデオで撮影したもの(DVカム)を編集室で疑似フィルム効果を入れたりしてました。一眼カメラで撮れる今なら、もっと“シネマ”らしくなっていたでしょうね。ビデオは生っぽくてシリアスな感じが出ませんので。
※「DVカム」Sony DVCAM:ソニーが開発したデジタル・ビデオテープ。当時コンビニでも販売されていたミニDVの業務用。CS放送等の納品用に採用されるなど高画質とエラーの少ない安定性を持っていた。
最長184分が用意され、従来の業務用テープに比較し、記録時間が飛躍的に向上。
伊藤:自分は長年ビデオで映像制作をやってきた経験があって、最初は一眼カメラの用語を理解するのも手間取りました。
ISOって?ゲインのこと?とかFって?アイリスと違うの?みたいに1回ビデオ用語に翻訳しないと理解できなかった(笑)その後、パナソニックのGH2を購入して練習しました。ビデオの方がさっと動画撮影できて楽な部分はありますよね。昔は動画と写真って別なジャンルだったと思うんですよ。
※「ISO」(ISO感度)スチルカメラ:カメラが光を捉える能力。たとえば感度を2倍にすれば光の量は半分で適正露出となる。
※「F値」(絞り)スチルカメラ:レンズを通る光の量の値
※「アイリス(光学的な明るさ調整)」「ゲイン(電気的な明るさ調整)」ビデオカメラ:アイリスは光の量を調整、ゲインはさらにその光を電気的に増幅させる。
でもCANONのEOS 5D Mark2の手軽に撮影できるシネマライクな映像の登場により、フォトグラファーが写真のスキルを活用して一眼カメラで映像に取り組むことによって、動画と写真の垣根が低くなり映像制作の概念がガラッと変わったという印象ですね。次回はそれぞれの違いや特徴について検証してみたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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