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「映像ミエカタDIY #36: A24と世界の入口」【ドリームムービー通信:299号】


「映像ミエカタDIY」は当たり前のものとして受け取っている映像の効果について、身近な素材を取り上げながら、改めてその面白さを確認していくシリーズです。先週に引き続きアメリカの新進映画制作・配給会社A24 の手掛ける映画作品を取り上げます。今回は「A24と世界の入口」と題してA24が手掛けてきた作品ラインナップをざっと眺めつつ、その世界観に触れてみたいと思います。

「A24の映画と言えば?」
そう聞かれたときに、みなさんはどのような映画を思い浮かべるでしょうか?私の場合は日本でも大変な話題となった『ミッドサマー』の印象が強く、A24と言えばなんとなくホラー映画がはじめに思い浮かんできます。

しかし、前回紹介した『パスト ライブス/再会』の制作・配給がA24であること知ったのをきっかけにA24の手掛けた映画作品の一覧を改めて眺めるとその印象はガラッと変わりました。

A24初の制作作品『ムーンライト』、英国のロックバンドオアシスのドキュメンタリー『スーパーソニック』、大人になったXジェネレーションのための『カモン カモン』、『レディ・バード』、『20センチュリー・ウーマン』、『魂のゆくえ』、『ファースト・カウ』、『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』、2023年のアカデミー賞でも注目を浴びた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、トーキング・ヘッズのライブを記録した1984年の伝説的な音楽映画の4Kレストア版『ストップ・メイキング・センス』、

そして今年の5月に日本公開が控える『関心領域』等々…。

すべてを挙げることはしませんが、A24が関わっていることを知らずに観ていた映画がたくさんあって驚かせられます。自分の観た映画だけで並べると、「あれもこれもA24だったのか」といった感じで、ホラー映画(自分から進んで選ばない)以外のすべてが揃っているような印象さえあります。

様々なジャンルと北米文化における「良識の共有」
この「すべてが揃っている」感じについては、様々なところで指摘がされていることでもあります。様々な「映画ジャンル/スタイル/形式」を用いながら、北米を中心とした社会的なイシューに対して、世代や様々なマイノリティを主要なキャラクターに配置して、総体として現代の(北米)社会を描いているとも言えそうなA24の作品群は、さながらマーヴェル・シネマチック・ユニバースのようです。

ここで興味深いのは社会的イシューへの踏み込みの具合についてです。それは様々な問題について触れながら、その踏み込みはどこか控えめで、社会的な事柄が個人的な物語へと収斂していくような雰囲気があります。これについては、「政治的な『主義』ではなく、込み入っているぽい『思想』でもなく、生活を基盤にできるような『良識』」*1として、「A24はいまの問題を『うまく』押さえてくる」*2という指摘もあります。

前回紹介した通り『パスト ライブス/再会』についても、東アジア移民を取り上げながらもその物語を正面から描いていないではないかという批評がありました。控えめな踏み込みで、多くの人に共有可能な「良識」として社会的なイシューにアプローチすることで映画が様々な事象との出会いの場として機能する。その一方で、一つ一つの事象と向き合うにはより深い踏み込みが必要なものです。A24作品という出会いの場をどのように活用するか、観客自身は常に問われ続けているのかもしれません。

再び「A24の映画と言えば?」
再びそう聞かれたときには、「すぐれたデザイン」を思い浮かべます。それぞれの映画作品については配給のみでの関わりから、制作まで行っているものと違いがあるのですが、ポスターやビジュアルのクオリティコントロールによってどの映画作品もある種の「A24らしさ」のような佇まいを携えることに成功しています。

このような優れたデザインは前述の「良識」同様に、それぞれの映画が接している社会的なイシューへの入口をより開かれたものにしている気がします。偶然出会った映画(とその社会的なイシュー)をきっかけに、思わず別のA24映画へアクセスしたくなるような「A24らしいデザイン」。これは音楽における、ある音楽と出会い、それを取り扱うレーベルからまた新しい音楽と出会っていくよう感じ(いわゆる「レーベル買い」)に似ているのかもしれません。

今週は先週に引き続きA24の映画作品について紹介しました。映画を探すときに「監督」や「俳優」をキーワードにアプローチする人は多くいると思いますが、そこに「A24」を加えてみても面白いのではないでしょうか。A24から世界の入口へ、ぜひアクセスしてみてはいかがでしょうか。(了)

*1, *2:「[座談会]拡散するムード、孤絶した家」、『ユリイカ』、(A24とアメリカ映画の現在)、vol.55 no.8, 2023, p.110, 青土社

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