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「映像ミエカタDIY #50:映画はいつまでも待っている|修復と保存の倫理」【ドリームムービー通信:356号】

「映像のミエカタDIY」は当たり前のものとして受け取っている映像の効果について、身近な素材を取り上げながら、改めてその面白さを確認していくシリーズです。前回につづき、今回も過去の映画作品のリマスターについて取り上げます。

前回はリマスター版制作への注目の高まりの背景にある産業と時代の要請について触れました。視聴環境の高解像度化に対応するためのリマスター版の必要性と、映像配信プラットフォームの隆盛による過去作品へのニーズの高まりの重なりがその背景にあることを挙げました。

今回はフィルムメディアの経年劣化から歴史的な映像作品を守るためのアーカイブ制作という文化的な側面、そして作家の意図に添った形で作品の映像や音声についてのポテンシャルを引き出すという芸術的側面について取り上げたいと思います。

映画を未来へつなぐ大切な役割

昔の映画フィルムは、時間が経つと色あせたり、縮んだり、ひどい場合は酸っぱい匂いを出しながらボロボロになってしまうことがあります。これは映画そのものが消えてしまうこともつながる危機です。そこでリマスターが大きな役割を果たします。フィルムをデジタルデータにすることで、劣化から守り、未来へと長く保存できるようになります。

映画の歴史を語る上で欠かせないのが、1895年に世界で初めて映画を発明したリュミエール兄弟です。彼らが残した1500本にもなる映画作品はまさに映画の原点といったものです。

この10年ほどの間に、その中から200本あまりの作品が、『リュミエール!』、そして『リュミエール!リュミエール!』の2つの映画としてまとめられるために、最先端の4Kデジタル技術で修復されました 。これは、映画の「いのち」を未来へつなぐリマスターの象徴的な出来事と言えます。

100年以上前の映像が、まるで昨日撮られたかのように鮮明によみがえり、現代の私たちもその感動を味わえるようになりました。学生の頃に見た作品がこのように生まれ変わるのか、と個人的にもとても驚いた出来事でした。

国立映画アーカイブのような機関では、フィルム映画のデジタル保存・活用についての取り組みが進められています。同時に”デジタル生まれ(ボーンデジタル)”の映画についても、長期保存の方法について研究調査が行われています。SDサイズのデータが時代から置いていかれつつあることからもわかるように、長期的な保存と利用という視点でどのように映画を残していくのかという意識が広く共有されることが望まれています。

 

作家性、そして作品の同一性はどのように守られるのか

数年前には映画監督ピーター・ジャクソンが、かつてマイケル・リンゼイ=ホッグ監督作品『レット・イット・ビー』として公開されたビートルズによる「ゲット・バック・セッション」の膨大な記録映像と音声を最新の技術で修復して、あらたに長編ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』を作り上げました。そして、さらにその修復された素材から映画『レット・イット・ビー』のレストア版が制作されるという、リマスターの積極的な利用という意味では非常に印象的な出来事がありました。

このようにデジタルでのリマスターには技術的な恩恵がある一方で、デリケートな問題も存在しています。それは作品の同一性や、忠実性をどのように保つのかという問題です。

監督不在の中でリマスターや修復が行われる場合にどのようにすれば作品の同一性が保たれていると言えるのか。監督がリマスター制作に携わることができれば、少なくとも作家性を損なうことは防ぐことができるかもしれませんが、その事実だけで過去のその映画作品と同じ作品だと言えるのか。

ある種哲学的な問題のようにも聞こえますが、作品の保存という面から考えればそれは実際的な問題です。一度出来上がった作品を別のフォーマットに移行するときに、その作品の同一性をどのような忠実性で担保できるのかは、先ほど挙げた文化的側面の話にも関わるとても大切な問題です。

現在リマスターされた作品の多くには、映画冒頭でリマスターの内容がテキストにて表示されています。いつ何がどのように行われたのか、もしくは何が行われなかったのか、そのような記録が映画作品とともにきちんと残されることは、とても些細なことのようにも思えますが長期的に映画作品が存在し続けていく上でとても大切な情報になるはずです。(了)

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