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「ドキュメンタリー番組制作の裏側を少しだけ紹介します。」【ドリームムービー通信:第156号】

前回のメルマガでは、先日放送された「プロフェッショナル仕事の流儀~庵野秀明スペシャル~」を題材に「ドキュメンタリー番組」とは、どういったものか?をお伝えしました。
そこで今号の執筆を担当しています私、神代が体験した、ドキュメンタリー番組制作の裏側を少しだけですが、お伝えできればと思っています。
暴露話などは期待されずに、あくまでも私が経験した一部の事例です。
決して全ての番組制作に、当て嵌まるということではありません。
今回のポイントは以下の5点です

1.題材をどこから見つけてくるのか?
2.出演交渉。
3.何にも起きない日々が続きます。
4.悪魔の囁きが…でもやっぱり嘘はダメ。
5.粘って大正解!

1.題材はどこから見つけてくるのか?

ドキュメンタリー番組の題材探しは、作品のスタートであり、「肝」でもあります。
題材探しには時間をかけて慎重にリサーチを行います。
制作プロデューサーや構成作家の独自のルートでスタートする場合もありますが、実は小さな新聞記事から着想を得る場合や、すでに書籍(自伝)化されたものから探す場合など様々です。
本当に小さな会話から題材を発見し企画が立ち上がる場合もあります。
私が制作チームに初参加で自己紹介をした際に、プロデューサーに「神代辰巳監督と同じ苗字じゃないか!」と声をかけられました。
私は「実は神代辰巳監督の遠縁です。」と伝えましたところ、「監督のドキュメンタリーを企画していたので協力してほしい。」といわれました。
プロデューサーは神代辰巳監督のファンだったらしく、私も実際にいくつかのリサーチを手伝いましたが、いくつかの壁があってか、企画の実現は叶いませんでした。

※神代辰巳(くましろたつみ)監督
ジャンル的に賛否が分かれる印象ですが、ショーケンこと萩原健一氏も自身の主演作へ監督のオファーを願い出るほどのファンだったそうで、日本映画界の重要監督の一人と言われています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E4%BB%A3%E8%BE%B0%E5%B7%B3

大きなネタだけでなく、身の回りの小さなことにもアンテナを張っていることで、ドキュメンタリー番組の題材は見つかってきます。

2.出演交渉。

題材が決まり、ターゲットとなる人物(主役)に出演交渉をします。
もちろん出演NGの場合も多くあります。
庵野監督のように、「映画の魅力を伝えるため」と目的がはっきりしている場合はともかく、赤裸々に自身の生活が記録され放送されることへの抵抗が無い方は少ないのではないでしょうか。
しかし実はもっとも難航するのは、出演者ご本人はなく、そのご家族と親戚などの周りの方々です。
私が参加したチームでも、実際にご本人とご家族の許可がとれ、番組として企画が通り、さあ、撮影に入るぞというタイミングで「親戚が怒っているので辞退したい」と連絡がありました…
結果としては、プロデューサーがご親戚の自宅に何度も足を運び、制作意図をお伝えし、最終的にはご納得をいただき、企画がボツになることはありませんでした。
ご家族やご親戚の立場で考えれば心配するのは当たり前ですし、世間からの注目を浴びてしまうので、本人だけの問題ではないのは当然のことです。

3.何も起きない日々が続きます。

色々なハードルを越えてやっと撮影がスタートになるわけですが、撮影スタートしても多くの場合、しばらくは何も起きません。
当たり前と言えば当たり前のことですが、長い人生で起こる様々な出来事は、長い人生だから「様々な事があった」となるわけです。
2~3か月の撮影期間中に起こることは限られていますし、普通何も起きないと言っていいくらいだと思います。
私が担当した番組では、雪深い山奥の学校に密着でした。
長期間雪山で何も起こらない生活を淡々と過ごします。
映画シャイニングのオーバールックホテルのような感覚です…
雪山の学校の生徒と淡々と日々を過ごすことになりました。
6時に起床⇒極寒の体育館で座禅⇒朝食⇒生徒の活動を撮影⇒昼食⇒生徒の活動⇒夕食⇒夜9時に就寝、毎日がこの繰り返しです。

4.悪魔の囁きが…でもやっぱり嘘はダメ。

何度もお伝えしていますが、ドキュメンタリー番組制作に「嘘」はダメです。
しかしあまりにも何も起きない状況は、番組を成立しなければという焦りから、おかしな考えが出てしまうことがあります。
私たちの場合も「このコメントが撮れれば(言ってくれれば)」「意見の食い違いで揉め事のシーンが」など…悪魔の囁きが頭をめぐってきて、スタッフも毎日そんな会話ばかりになってしまいます。
毎日が同じ繰り返しで限界が来ていたのかもしれません…
しかしプロデューサーの「あと3日待ってなにもなければこのまま帰りましょう、あとはこっちで考えます。」という一言で私たちのチームはその誘惑に負けずに済みました。

5.粘って大正解!

何も起こらないからと言って、何も撮影しないわけではなく、出演者の日々の生活や、ちょっとした会話を記録し続けます。
私たちの番組では、「なんと取材最終日に!」…ではないんですが、本当に最後の最後で、いままでの取材記録が伏線になるような場面が撮影できました。
偶然と言われればそれまでですが、やはり王道こそが正解だったと思うような場面でした。
ただただ、自分たちの企画を信じて、最後まで粘って撮影するほかない、そこにのみドキュメンタリー番組の正解はあるんだ!と感じた経験でした。

最後に、「ドキュメンタリー」と「ノンフィクション」の違いについて、読者から質問をいただきましたので、少し言及いたします。
Weblio国語辞典には、下記の記述があります(抜粋)。
ドキュメンタリー:実際にあった事件などの記録を中心として、虚構を加えずに構成された映画・放送番組や文学作品など。
ノンフィクション:過去に現実にあった出来事(事実)に基づく物語として制作された作品(コンテンツ)、および、作品ジャンルのこと。

「ドキュメンタリー」は、史実や記録に基づいてつくられた主に「映像作品」で、
「ノンフィクション」は、創作が加えられていない主に「読み物」と理解すればわかりやすいように思います。
しかし、映像作品にも「ノンフィクション」という呼称が増えており、いずれで呼称しても間違いではないように感じられます。

いかがだったでしょうか?今回は2回にわたって「ドキュメンタリー番組とは」をお伝えしました。
ドキュメタリー番組に興味をもっていただけましたか?

今週からスタートするゴールデンウィーク、外出を控える為にも、サブスクの動画配信サービスにもたくさんのドキュメンタリー番組がありますので是非ご覧になってみてください。

今週もメルマガを最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回のメルマガはGW明けの5月12日配信予定です。
お楽しみに。

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