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映像を比較可能なものにする 「リンカク」と現代アートにおける「タイポロジー」について 【ドリームムービー通信:第122号】

今週から数回に渡りましてドリームムービーのスタッフ、フジムラがメルマガを担当致します。

ドリームムービーでは日経ビジネスさまの電子版コンテンツ”1分でわかる起業家たちの「リンカク」”などの映像制作を担当しています。

メルマガでは私の専門領域である現代アートの話題も絡めながら当社の情報をお届けして参ります。
どうぞよろしくお願い致します。

今回のトピックは「リンカク」と現代アートにおける「タイポロジー」です。

日経ビジネス電子版コンテンツ”1分でわかる起業家たちの「リンカク」”は2019年7月から連載が開始され、毎週金曜日に1分間のインタビュー映像で気鋭の起業家の方々を紹介する映像コンテンツです。

レギュラーシリーズと台湾シリーズを合わせると現在まで50本以上のインタビューが公開されています。

日経ビジネス電子版コンテンツ”1分でわかる起業家たちの「リンカク」

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00073/

「リンカク」は企画された記者さまの優れたコンセプトを踏まえ、連載開始から長期的な視点でのアーカイブの構築を考慮した撮影と映像制作のスタイルを採用しています。
そこで参照しているのが現代アートにおける「タイポロジー(類型学)」です。

今回は「リンカク」と「タイポロジー」について、この手法を用いた作品で現代アートのシーンに多大な影響を与えた作家に触れながら考えてみようと思います。

「リンカク」においてはアーカイブとしての機能を考えた時に「それぞれのインタビューが比較可能である」ことを重要と考えて撮影を含む映像のデザインを行いました。

比較文学であれば「対象A」と「対象B」を比較するためには、「対象A」と「対象B」に共通する「共通項C」を設定してはじめて比較可能な状態になると考えますが、映像コンテンツである「リンカク」の場合は各インタビューを比較可能にするために、現代アートや写真における「タイポロジー(類型学)」を意識しながら視覚的な共通項を作っていきました。

現代アートにおけるタイポロジーとはどのようなものか。
ドイツのアーティスト/写真家のベルント・ベッヒャー( 1931-2007)とヒラ・ベッヒャー(1934-)(以降「ベッヒャー夫妻」と表記)の作品を紹介する形で少しだけ取り上げてみることにします。

ベッヒャー夫妻の代表的な取り組みに、ドイツ国内をはじめとしたヨーロッパ諸国の近代産業にまつわる建築物(給水塔、溶鉱炉、サイロ、ガスタンク等)を記録し続けた写真作品のシリーズがあります。


「タイポロジー」という言葉をタイトルに冠したそれらの作品群では、同じ機能と形を持つ産業建築を極めて厳密な撮影方法(撮影機材、天候条件、構図の統一)と、展示や写真集でのグリッド配置を用いてそれぞれの建築物の形態を比較可能なものとして取り扱われています。

1990年のヴェネツィア・ビエンナーレで夫妻が写真ではなく彫刻の賞を得たのもとても興味深いことで、夫妻のタイポロジーを用いた写真作品によって産業建築物が匿名の彫刻としての見方を与えられたとも言えるのかもしれません。

「リンカク」は写真作品でもインスタレーション(様々な要素から展示空間全体を作品として構成すること)でもなく、1分間という時間の幅を持った映像コンテンツの集まりのためグリッド上に配置するようなことは出来ませんが、毎回同じ撮影条件を再現して収録を行い映像上での共通項を保てるように制作を行っています。

映像上の共通項を作り出し比較可能な状態にすることにより、コンテンツ数が増えれば増えるほど、それぞれの起業家の際立った個性が浮き上がるようにと考えてのことです。

「リンカク」というコンテンツのタイトル自体が「形態」や「彫刻」といったタイポロジーのキーワードと呼応するのも興味深く感じています。

今週金曜日にも新しいインタビューが公開される日経ビジネス電子版「リンカク」シリーズ。
ご視聴の際には今回お伝えした映像のタイポロジー的な側面についてもご注目いただけると大変嬉しく思います。

今回駆け足ながら触れさせていただいたベッヒャー夫妻の写真作品につきましても、川崎市市民ミュージアム(現在は2019年の台風19号の被害により休館中)や国立近代美術館等の国内美術館でもコレクションされていますのでご機会ありましたらぜひご覧になってはいかがでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回もどうぞお楽しみに!

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