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「映像のミエカタDIY #26:『MUBI』とまだ見ぬ映画の出会い方(2)」【ドリームムービー通信:258号】

「映像のミエカタDIY」は、当たり前のものとして受け取っている映像の効果について、身近な素材を取り上げながら、改めてその面白さを確認していくシリーズです。先週に引き続き今週も、毎日1本ずつ入れ替わっていく30本の映画をメインプログラムに据える映画配信プラットフォーム「MUBI」を紹介します。私自身もMUBIの利用を開始したばかり(1ヶ月)ですが、そこで感じたこともお伝えできたらと考えています。

「映画という文化を愛している10パーセントの人たちに向けて」
かなり前の記事になりますが、WIRED誌にてMUBIの創業者/CEOであるエフェ・カカレルの言葉が紹介されています。

「AmazonやNeflixを普段から愛用している人たちでさえ、90パーセントはMUBIで取り上げているような映画には興味ももたないだろうと思う。でもぼくらは、映画という文化を愛している10パーセントの人たちに向けて、完璧な映画体験を届けたいんだ」

大変印象的な言葉です。実際のところ何をもって「完璧な映画体験」とするのかは人それぞれ違うと思いますが、映画を見ることによって世界が多様であることを実感したい人にとっては、MUBIというプラットフォームは充実した映画体験になるはずです。

私にとっても、メインコンテンツである「FILM OF THE DAY」で紹介されている30本の映画すべてが初めて存在を知るものであるなど、プラットフォーム上で紹介されているタイトルの数自体は他のプラットフォームより明らかに少ないのですが、それぞれが映画と世界の多様さ両方を表現しているかのようなラインナップにはただただ驚くばかりです。

過去の映画との出会い
とりわけMUBIの過去の映画作品に対するアプローチは他のプラットフォームと一線を画するものがあります。例えば1968年から80年代の西ドイツの女性映画作家の作品を紹介するフェミニズム特集など、現代的なトピックと過去の映画作品を結びつけた特集を組むことで、いまの時代に暮らす人々にとっての過去の映画との出会いをより意味のあるものにしています。

映像修復された資料的にも貴重な映画作品の紹介にも意識的で、現在MUBIで視聴できる作品の中には、作家であり活動家でもあったジェイムズ・ボールドウィンのパリでのインタビュー映像などもあり、これまで知らなかった過去の作品との出会いがプラットフォーム上に散りばめられている印象です。

新しい映画との出会い
新作映画の紹介についても、MUBIが配給(英米やラテンアメリカが中心)をすることでプラットフォーム上での配信も含めて積極的に行われています。配給リストを眺めてみると、日本で公開されている海外作品や日本人監督作品のタイトルも並んでいることに気がつくはずです。今年の5月に国内公開されたミア・ハンセン=ラブ監督最新作『それでもわたしは生きていく』については製作にも名を連ねるなど、先に引用した「10パーセントの人たちに向けた」ところから、MUBIがより多くの人々の映画体験に影響を与える存在になってきている印象も受けます。

全ての映画をリストに加える
また、データベースの構築に対しても高い意識を持っており、配信としての取り扱いを問わずあらゆる映画作品をリストに反映させることを目的として掲げています(利用者からの協力も積極的に求めている)。

その驚異的なデータベースでは、映画監督のフィルモグラフィを調べる場合にも長編映画だけではなく、5分の短編からミュージックビデオまでも含めた詳細なリストにアクセスすることも可能です。また監督や役者だけではなく、例えば「お気に入りの映画の撮影監督が他にどんな作品を撮影しているのか」といったことまでもスムーズに調べることができるのは驚きです。こういった点からも他のプラットフォームは異なるMUBIの映画文化に対する姿勢を窺い知ることができるようで興味深いです。

日本からの利用について
最後に日本からの利用についての実感を少し記しておきます。

国際的な配信プラットフォームであるゆえ利用地域によって視聴可能な作品に違いがあります。前述したミア・ハンセン=ラブ監督最新作についても英国ではMUBIの配給で今年4月に劇場公開が行われ、6月には早速プラットフォーム上での配信が開始され話題になりましたが、日本国内からは残念ながら利用できません(→プラットフォームのデザイン上はそれぞれの地域に合わせた表示になっているので不便さは感じにくいのですが)。

そして、プラットフォームの表示対応言語に日本語が含まれていないため、他言語で利用する必要があります。字幕についても日本語字幕付きの作品はごくわずかなので、いまのところ「日本語で楽しむ」ということについては難しいというのが実情です。

一方、MUBIを日本から利用することの1番の楽しみはなんと言っても英語圏以外の映画作品との出会いにあるのではないでしょうか。日本国内で劇場公開作品を中心に、絞り込まれた形で英語圏以外の映画に触れている身としては、日本では紹介されてこなかった欧州や南米の映画作品に触れることは、映画の多様性を改めて実感できる機会です。

言語の問題はありますが、「国際線に搭乗して英語字幕で映画を見るような体験」を自分の部屋で、もしくは通勤中に味わえると考えてみると印象もいくらか変わってくるかもしれません。皆さまもMUBIで映画の旅に出かけてみてはいかがでしょうか?

<了>

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