今回も引き続きビデオカメラと一眼カメラの映像の違いはどこにある?の当社スタッフでの座談会をお送りいたします。
*写真は「写真AC」より
今回はこの議題の最終回として、では実際に映像を作成するのに、撮影機材や撮影方法などを映像制作会社に一体どういうリクエストをしたらいいのかという議題で話します。
伊藤:たとえば企業さまが動画の制作をお考えの場合に、撮影する機材をビデオカメラか一眼カメラかというリクエストはありなのでしょうか?
神代:もちろん、どちらをリクエストしていただいても問題ありません。
現にここ数年、ビジネスの動画の世界でも、一眼カメラで撮影したいと希望されるお客さまも多くいらっしゃいます。
余談ですが、事前の打ち合わせでは、一眼カメラではなく、ビデオカメラで、という依頼で当日撮影現場についてから、お客さまに背景をボカした映像が欲しいと言われたことがあります。
完全に私の失敗談になりますが、もっと深くお客さまのイメージをヒアリングしておけば良かったと思いました。
お客さまも、その違いを明確に理解していない方もいらっしゃいますので、こちらがきちんと説明をしてから、選んでいただくことが大切だと感じます。
以前のメルマガでもお伝えしたように、一眼カメラの弱点といえるかもしれませんが、やはり長時間のセミナーの撮影などには向かないと言えます。
ただ、そこで「セミナー撮影だから一眼カメラは使えませんよ」ではお客さまも残念に思いますし、満足感はないと思います。
伊藤:その場合お客さまには、どのようにご提案しますか?
神代:例えば「セミナーの冒頭に流す映像を、一眼カメラでより高揚感のある映像にしませんか?」や「本編はしっかりとビデオカメラで撮影し、印象に残るメイキング映像を一眼カメラで撮影するのは、どうでしょうか?」など、次回のセミナーのPRになるような動画を提案するという感じでしょうか。
伊藤:例えば、お客さまが一眼カメラで撮影された映像を、編集して完成させるというオーダーはありますか?
神代:そういったケースもあります。「高価な一眼カメラで撮影したが、クオリティが良くないので編集で上手くアレンジして欲しい」など様々な状況がありますが、お客さまとしては、困っていることには変わりないですから、もちろんご対応します。
実際に映像を見せていただきましたがきちんと撮影されていました。ただしフォーカスをオートで撮影されていたので、コメントする人物のピントが、合ったり合わなかったりしていました。
ピントのズレは修正するのが難しいので、撮影時に最も気をつけて欲しい項目ですね。
伊藤:では、それぞれの使い分けについて皆さんの意見をお伺いします。
神代:一眼カメラ動画らしいということで言えば、何度も出できますが「背景ボケ」と、もう一つ「前ボケ」でしょうか?そのあたりはやはり藤村さんに聞きたいですね。
藤村:画面上で見るべきものにピントを合わせて、その前後がボケている状態というのは視聴者の目線がピントの合った対象への没入度が高くなります。
前ボケのことで言いますと、画面手前に映るものほど、カメラが移動する際には画面上での移動距離が大きくなります。
新幹線の座席から窓越しに外の景色を眺めることを思い浮かべていただけたらわかりやすいかもしれません。
手前の建物は一瞬で過ぎてしまいますが、遠くに見える山々はいつまでも窓の外に見えています。
これを具体的な撮影場面に置き換えてみましょう。
音楽のライブの撮影の際に、立ち見の観客越しにカメラを水平移動させながら撮るとします。
画面上では一番手前に観客の後ろ姿が位置し、その奥にステージが見えている状態です。
水平移動しながら撮影する(=新幹線の車窓)際にピントが画面全域に合っていると、ライブパフォーマンス(=後方の山々)よりも前方に位置する観客の後ろ姿(=手前の建物)の方が画面上での移動や動きが大きくなることも併せて、視聴者の視線は次々と画面に現れる観客の後ろ姿へと流れて行きます。
一方で、ステージ上のライブパフォーマンスのみにピントが合い、観客の後ろ姿がボケている状態(前ボケ)の場合は、水平移動と前ボケによってたくさんの観客がいることが画面上で表現されながらも視聴者の視線はライブパフォーマンスへと集中します。
それは実際に客席の中でライブを見ているような効果をもつ映像表現にもなり得ます。
このように、ピントのコントロールによって画面に映るものに色々な意味や役割を与えることが可能です。その辺りの画作りの面白さは一眼カメラでの動画撮影の醍醐味の一つかもしれませんね。
荻本:既出ではありますが、セミナーなど長時間の撮影で使用するのは難しいところでしょうか。
設定にもよるでしょうが、一眼カメラは記録容量(ファイルサイズ)が比較的大きくなるので、収録メディアにも気を使う必要があると思いました。
その点からも短時間向けの撮影向けになるかたちですかね。
あるメッセージビデオを撮影した際には、思ったよりも収録時間が伸びてしまいハラハラする感じでした。
ただ、やはりメッセージビデオのような、ワンショット、カメラ目線でお話しするコンテンツには、人物フォーカスできる一眼カメラの画が効果的だと思います。
伊藤:私は最近撮影させていただいた会社案内動画では、特にリクエストはなかったのですが、撮影場所は狭い工場などが多く移動も大変多かったので、撮影には三脚にコンパクトな一眼カメラを乗せた機材のみで挑みました。
暗所での撮影や狭い場所では広角レンズによる引き具合等をうまく活用できたと思います。
また工場内では企業機密などがありますので背景に対するリクエストもあります。こちらは一眼カメラの背景ボケをうまく活用できました。
神代:最後に一つの例として、私の実家の町(福岡)の、映像制作の取り組みをお話しさせてください。
町のPRをねらったプロモーションビデオを東京の大手プロダクションに依頼し、ユニークでクオリティの高い映像が完成しました。
しかし町民からはあまり評判が良くなかったのです。
多くの町民が「イメージと違う」「町長がダンスするのはちょっと」など、様々な意見が完成後に出てきました。
これは私の想像になってしまいますが、担当者やプロダクションがやってみたい映像を半ば強引に提案して制作されたのではないのでしょうか?
※AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」がヒットした頃でした。
このことを教訓にされたのか、その後、町には映像制作の実行員会ができました。
映像制作に町全体が協力し、完成した映像はその町の魅力を余すところなくアピールできていました。
動画制作は形に残るものですし、ビジネスの世界ではイメージが重要です。
もちろん、どんなカメラを使うかも重要ですが、何をどのような形で伝えたいのかをじっくり考え、その上で映像制作のプロと一緒にアイデアを出し合うのが理想なのかもしれません。
伊藤:大前提として機材に頼ったコンテンツではなく、何を表現し何を伝えるかをしっかりと全員が思い描き、魅力的なコンテンツを作るのが重要ということですね。
そしてそのコンテンツに最適な機材をチョイスしていけば、より作品としての魅力が増していくということになる。
いくら綺麗な映像を撮影しても、内容がよく伝らわなかったり、つまらないと本末転倒です。
それぞれの特徴を生かした魅力的な映像制作を是非当社と作りませんか?
お気軽にご相談いただければと思います。
次回は「一つのコンテンツを掘り下げる!スタッフはそれぞれどう捉えたか!」を予定してます。
お楽しみに。