前回に引き続き「一つのコンテンツを掘り下げる!スタッフはどう捉えたか!」をお送りいたします。
今回は名作と言われているCMについて話してみました。
神代:全国で頻繁に流れているものが良かったのかもしれませんが、CMというと、どうしてもこれを外せませんでした。
二階堂酒造の「大分むぎ焼酎二階堂」シリーズです。
地方のCMとなりますが、その知名度は高く「大分むぎ焼酎二階堂」のCMはどれも名作ぞろいです。
創業が150年以上前の1866年という歴史ある二階堂酒造。
1987年「自然」篇が最初に制作されたCMで、2019年「本を読む人々」の最新作まで続く、とても息の長いシリーズCMです。
詩的なナレーションと映像美が印象的な、とても記憶に残る作品だと思います。
実は広告代理店大広九州の同じチームが、30年以上に渡って制作しています。
二階堂酒造の公式サイトで、近年の作品が視聴可能ですので、ぜひ自分の好きな作品を見つけていただければと思います。
「大分むぎ焼酎二階堂」公式サイト
https://nikaido-shuzo.co.jp/library.html
藤村:「無口なものほど、私に語りかける。」というコピーで端的に示されている価値を、同じようなものを作るということではなく、一貫した美学で30年以上も表現し続けていることが素晴らしいですね。
伊藤:実はこのシリーズCMは、神奈川県出身の私は知らなかったのですが、関東圏では流れていたのでしょうか。
すべての作品がとてもシュールな作風ですね。
綺麗な風景だけでストーリーを作るのはとても難しそうです。
このCMは観る者の空想を許容する深みがあって、とても素晴らしいと感じました。
当初は、最後まで何のCMか分からない抽象的なイメージだったと思いますが、回を重ねるうちに、見た瞬間「大分むぎ焼酎二階堂」のCMだ、と感じるようになるのでしょう。
ずっと続いて欲しいシリーズです。
荻本:私は大分出身ということもあるのか「二階堂酒造」は記憶に残っているCMです。
自分はお酒に興味がある人間ではないので、商品よりもこの映像の雰囲気がいまでも頭の中に残っています。
丸大ハムのCM「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」と二階堂酒造は特に印象的だったのでよく覚えています。
ウェブサイトで紹介されている中では1992年『私の道』が一番好きな作品です。
“風の道を辿って旅が始まる” 何らかの理由があって旅に出た主人公。黒と赤の傘が落ちてくるシーンは男女の複雑な関係を勝手に連想しました。
(映像としては「シェルブールの雨傘」の冒頭のシーンを意識してるというと言い過ぎですか)
風の道とは過去に愛した女性へと続く道なのかななんて思ってしまいます。カラになって横たわった二階堂のボトルは、その恋の終わりをイメージさせますし、わずか30秒でそういうストーリーを想像できるところが面白い。
映像から監督の趣味が見えてきます。さり気なくビル・エヴァンスのレコードジャケットがありますし、ジャズ好きでもあるのかななんて。
ジャズとお酒は相思相愛の仲ですしね。
1989年『街の夢』は、大自然の恵みをイメージしてきたそれ以前の作品と比して、異色なものと言えるかも知れません。
大都会の空中を二階堂のボトルが飛んでいるんですが、合成感がでている映像なんですね。
当時は先端技術を活用した目新しい映像効果だったんでしょうか。
89年というとバブル経済の時代ですから、その影響が少なからずあったと思いますが、かなりの意欲作です。
この『街の夢』以降は方向性を改めたのか、一貫して、人生という道を歩む旅人の郷愁が描かれていて何か物寂しい感じがします。
そしてその旅人のお共にはいつも二階堂がいる…
声高に宣伝しないCMのほうが、実は印象に残るという好例だと思います。
神代:私自身がこれらのCM制作に携わっているわけではありませんが、皆さんの意見が本当にうれしいです。
大広九州のスタッフの皆さんに届くといいなと思います。
神代的な“好きポイント”を最後に紹介します。
皆さんに挙げていただいたように、詩的な映像と望郷、哀愁を誘う音楽が素晴らしいです。
でも私にとっては、必ず最後に出てくる、シンプルな白文字で描かれるテロップ、コピーなんです。
このコピーが出ると心にズドンと決まります。
では、二階堂のCMで私が好むコピーをいくつかご紹介します。
「一生に何回、後悔できるだろう。」2008年『消えた足跡』篇
「明日はいつも明るく、未来は眩しかった。」2013年『心を刻む線』篇
「人には、大きな心残りがひとつあります。」2012年『昭和の母』篇
「心の中で吹く風は、私をあの日へ連れて行く。」2016年『還っていく夢』篇
いかがでしたでしょうか?
「大分むぎ焼酎二階堂」はお近くのコンビニでも取り扱っています。
今晩あたり、CMのアーカイブを観ながら、むぎ焼酎を嗜むのはいかがでしょうか?
次回はこのテーマの最終回として当社の動画作品についてお話しします。
お楽しみに。