「映像のミエカタDIY」は当たり前のものとして受け取っている映像の効果について、身近な素材を取り上げながら、改めてその面白さを確認していくシリーズです。今回は現在開催中の「2023 FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド」に合わせて、「サッカーを『競技』から『物語』へと捉え直す (3)」と題し、サッカーについてのドキュメンタリー表現を紹介します。
サッカーの試合と試合の間にあるものを表現する
「2022 FIFAワールドカップ」の際の記事でも紹介していますが、サッカーのドキュメンタリーといえば近年では選手個人よりもチーム自体を対象として捉えたドキュメンタリーが主流になりつつあります。
そこに映し出されるのは試合そのものではなく、サッカーの試合と試合の間に存在しているサッカーチームの日常とも言えるものです。ソーシャルメディアを通して世界各国のクラブチームが自前で発信するものから、Amazonが制作する濃厚なドキュメンタリーシリーズ『ALL OR NOTHING』まで様々な規模で、サッカーを「競技」ではなく「物語」として捉え直す作業が映像表現を用いて行われているのは実に興味深いところです。
そういった流れはクラブチームだけではなく、現在では各国代表チームにおいても当たり前のものとなり、各国サッカー協会がソーシャルメディア上での映像活用に力を注いでいます。日本サッカー協会（JFA）と日本代表についても、2022 FIFAワールドカップでの男子日本代表の活動を追った映像コンテンツ「TEAM CAM」は大変な話題となりました。
『TEAM CAM』：2023 FIFA女子ワールドカップでの女子日本代表（なでしこジャパン）とドキュメンタリー表現
2022 FIFAワールドカップ現地でのキャンプや試合前後の選手の姿や、選手以外のチームスタッフの働きなどを捉えたコンテンツ「TEAM CAM」の成功を手応えとして、JFAは2023 FIFA女子ワールドカップに臨むなでしこジャパンの姿を大会直前の国内合宿から「TEAM CAM」で公開しています。
一般メディアでは取材が届かないチームの姿をドキュメンタリーとしてファンに共有することは、前回の男子代表の時と同様に今大会のなでしこジャパンの魅力を伝える大きな役割を担っていると言えるでしょう。
より長い期間を捉えた「TEAM CAM」
前回W杯の男子日本代表を追った「TEAM CAM」との違いは取材期間の長さにあります。前回W杯は開催地カタールの暑さを避けるためシーズン中の開催という、準備期間の極端に短い変則的なスケジュール（通常は欧州各国のリーグ戦のシーズン終了後に行われる）で開催されましたが、今回の女子ワールドカップは通常通り1ヶ月ほどの準備期間の後に開催ということで、「TEAM CAM」も6/27スタートの国内事前合宿から代表活動を追っています。
日本の暑さが伝わってくる国内合宿から、開催地である南半球に位置するニュージーランド（オーストラリアとの共同開催）へと舞台を移し、季節も夏から冬へとガラッと変わり本番の緊張感も徐々に増していくという流れを、長い時間をかけて丁寧に共有していくことは、「競技」を「物語」として捉え直していくという意味でも効果があるものです。
女子サッカーの世界規模での人気の高まりに加えて、出場国数の増加とアフリカ・南米の出場国の健闘などで盛り上がりを見せる2023 FIFA女子ワールドカップ。今大会のなでしこジャパンは各国メディアからも絶賛される素晴らしいパフォーマンスを見せ続けており、8/11にはベスト4をかけた強豪スウェーデンとの試合が行われます。「TEAM CAM」でなでしこジャパンの歩みを辿り、注目の一戦をより特別な物語として体験してみてはいかがでしょうか？
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今回はJFAが取り組むドキュメンタリーコンテンツ「TEAM CAM」について紹介いたしました。
次回は『ALL OR NOTHING』でサッカークラブについてのすぐれたコンテンツを制作してきたAmazonが送り出す新作ドキュメンタリーに触れながら、クラブチームのドキュメンタリーについて紹介する予定です。
次回もお楽しみに。（了）